
この記事は[Part 1]の続きとなっているので、統語論について勉強したことのない方は以下の[Part 1]を先に読むことをすすめます。
統語論の分析でよく使われる品詞
統語論の分析で使いたい品詞は、学校で学ぶものと少し異なることがあります。
学校文法で見かける分類
学校で教わる英語の品詞は、「英語を学ぶ」ことが目的なので英語の特性に合わせた分類がされています。
例えば、辞書(ランダムハウス英和大辞典)の採用している品詞分類を確認してみるとわかりやすいです。

https://japanknowledge.com/contents/randomhouse/hanrei03.html
学校文法的な仕分けでよければ、次のページがキレイに説明しています。
英語が苦手な方でも、学校で教わる日本語の品詞分類は覚えていると思います。
こちらの方がグロテスクかもしれません。

日本語の品詞についてみていると、これがいかに日本語に最適化されているのかわかると思います。
もし日本語のこの品詞体系を統語論の句構造規則に当てはめようとすると、例えば助詞に相当するものが確認できない言語の分析では難航します。
統語論で活用する品詞(Parts of Speech)
統語論で使う品詞は、すべての言語に存在すると考えられているいくつかのものを基準としています。
統語論では、語句の性質からそれらを分類する「品詞」は【統語範疇(Syntactic Category)】と呼ばれます。
統語範疇は次の2種類に分けられます。
・語彙範疇(Lexical Category):主に文の内容を伝える語句が含まれる
・機能範疇(Functional Category):主に文の文法的な機能を担っている語句が含まれる

機能範疇にも意味に変化を与えるものはありますが、それ単体で何かを表すことができません。一方で、語彙範疇は意味を伝えるために必要な意味語が含まれており、単体で何かを伝えられる語が多いです。
語彙範疇
語彙範疇には以下の4種類が含まれます。
・名詞
・動詞
・形容詞
・副詞
これらは、それぞれが絶対的な定義を持っているのではなく、文中の位置や他の範疇との関係から決定されます。

後述する機能範疇とは異なり、語彙範疇では毎年のように新たな語が生まれています。
基本的に、新たに流行する語の品詞を語彙範疇だと考えるとわかりやすいでしょう。
名詞 Noun
名詞は、形容詞や決定詞(後述;機能範疇を参照)の隣にみられる。
よく確認されるパターンは、次の3つです。
(a)形容詞 + 名詞
例 a-1:キレイな花
例 a-2:angry dog
(b)決定詞 + 名詞
例 b-1:彼の家
例 b-2:his mother
(c)決定詞 + 形容詞 + 名詞
例 c-1:彼の大きなカバン
例 c-2:her beautiful hair
形容詞が名詞の前に来るのか後に来るのかは言語によって異なりますが、形容詞と隣接可能であることは基本的に変わりません。
また、言語によっては名詞に可算・不可算がみられたり、性別によって異なる形になったりします。
動詞 Verb
動詞は副詞に修飾されることができます。また、時制(後述;機能範疇を参照)による影響を受けることが確認できます。
副詞が動詞にどうくっつくのかは言語によって異なります(下記dを参照)が、副詞による修飾は動詞の特徴の一つです。
(d)(副詞 +) 動詞 (+ 副詞)
例 d-1:はやく動く
例 d-2:quickly walk
例 d-2‘:walk quickly
以下、時制の例
(e)助動詞による影響
例 e-1:食べられる
例 e-2:帰りたい
例 e-3:can eat
(f)時制による影響
例 f-1:帰った
例 f-2:walked
形容詞 Adjective
形容詞は名詞を修飾します。言語によっては、隣接していない名詞でも、それが主部にあれば述部から修飾できます。(例hを参照)
言語によって名詞との隣接位置が異なることがあります。
(g)形容詞 + 名詞
例 g-1:赤い花
例 g-2:big book
(h)述部からの修飾
例 h-1:彼女はキレイだ
例 h-2:The dog is large
副詞 Adverb
副詞は動詞の修飾を行えるほか、形容詞、句、文を修飾できます。
(i)動詞の修飾
例 i-1:はやく動く
例 i-2:quickly walk
例 i-2‘:walk quickly
(j)形容詞の修飾
例 j-1:とても大きい
例 j-2:very tall
(k)句・文の修飾
例 k-1:昨日私は財布を忘れた
例 k-2:They nervously performed before a large audience
機能範疇
機能範疇は、伝統的に機能語と呼ばれている語が含まれるカテゴリーですが、統語論ではより広く考えられています。
以下の4種類を基本として考えましょう。
・前/後置詞
・決定詞
・補文標識
・時制
特に機能範疇は言語による違いが大きいので、このように一般化しようとする試みでは色々な議論が起こります。
前/後置詞 Pre/Postposition
これらは名詞にくっついて文法的な機能を与えます。その結果として元の名詞に意味的な変化が起こることがあります。

言語によって前置詞なのか後置詞なのか異なります。
日本語・韓国語では後置詞、英語・スペイン語などでは前置詞です。
例 l-1:on the bed
例 l-2:学校に
決定詞 Determiner
決定詞は名詞とくっつき、その名詞に関する情報を与えて名詞の性質・意味を決定します。
この中には次のものが含まれます。
・冠詞:a, the
・指示代名詞:この、その、あの、どの、this, these, that, those
・数量詞:every, many, most, few, all, each, 個、枚 …
・所有表現:私の、彼の、my, his, its, their, 〜の、’s
言語によって大きな違いが見られますが、これらの区分で十分に分析可能です。
例えば、同じ数量詞区分であったとしても日本語と英語とでは表すものが大きく異なります。しかし、どの言語であっても、その語が名詞の性質を決定する語であることに変わりはありません。
補文標識 Complementizer
補文標識は文中に別の文を挿入するために使われます。
次のような例文で太字にあたるものが補文標識で、下線の引かれた箇所が補文標識によって挿入されている文です。
1) I think that they need more homework
2) I wonder if you could wait a moment
3) I don’t know whether the report is true
4) 私は彼女が嘘をついていると思う
5) 私は彼が大学に毎日通っているかどうか知らない
時制 Tense
時制には、時制だけでなく助動詞や不定詞も含まれます。
句構造規則に基づいた分析を行う際に説明しますが、助動詞や不定詞と違い、時制の要素は全ての文に含まれます。従って、ここでは時制と呼びます。

このカテゴリーを時制として扱うかどうかには長い議論があり、統語論の創始者であるチョムスキー自身でさえ研究を進めていくうちに考えが変わってきていました。
よくある論点としては、時制ではなく、文に影響を与える「屈折要素(Inflection)」だと考えるかどうかがあります。
統語論の専門書や入門書によって、TenseのTを使っているかInflectionのIを使っているか異なります。
時制の例を見てみましょう。
1) I will my lunch after class.
2) I can fly
3) 私はイチゴを食べた
4) I come here to study
5) はやく帰りたい
句単位での範疇
これらの語はそれぞれの範疇に分類できますが、それを主要部とする句もその範疇に分類できます。
例えば、「花」という名詞(Noun)を主要部とする句「美しい花」は、主要部である花の影響を受けて名詞句(NP)ということができます。
このような句の発想を柔軟に受け入れることで、以後取り扱う句構造規則もわかりやすくなると思います。



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