文構造を研究するためには、言語の構造を一般化して捉える必要があります。
例えば、次の文を見てみましょう。
(1) John read the book.
(2) ジョンがその本を読んだ。
(1)では、この文を主語の部分(主部)と、述語的要素を含む部分(述部)に分けられます。
(1) [主部John] [述部read the book].

(2)でも同様のことが言えます。
(2) [主部ジョンが] [述部その本を読んだ].

ここからさらに分けてみましょう。
文を主部・述部という二つの要素に分解することを次のように表現しましょう。
文 → 主部 述部
この矢印を用いた表現を、よりわかりやすく表現したのが次のような樹形図(ツリー)です。

文構造の違いを意識する
先ほど(1)と(2)をみたとき、英語でも日本語でも変わらない構造になりました。
しかし、日本人が英語を学習するときに苦しむものに語順の違いが含まれているように、日本語と英語には根本的な差異があるはずです。
これらは(1)と(2)からもみることができるので、もう少し分析してみましょう。
(1) John read the book.
[主部John] [述部read the book].
(2) ジョンがその本を読んだ。
[主部ジョンが] [述部その本を読んだ].
赤くなっている箇所は、述部の中に含まれている述語的要素であることがわかります。
また、下線部の引かれた箇所は、述語として働いている要素を補う働きをしていることが確認できます。
これを整理すると、(1)と(2)はそれぞれ以下のような構造になっていると考えられます。

述部 → 述語 補部

述部 → 補部 述語
(1)の特徴は、述部があったら、その主要的な部分(主要部)となる述語が述部内で先に来ることです。
一方で、(2)では主要部は最後に来ています。
(1)のような特徴を持っている言語を主要部先行型言語(Head-initial)、(2)のような特徴を持つ言語を主要部後行型言語(Head-final)ということがあります。

Head-initialとHead-finalの日本語訳は、文献によって異なる場合があります。
(1)を主要部先導型言語、(2)を主要部終端型言語と書いている文献を目にすることもあるでしょう。
色々な例
毎回主語・述語のはっきりした文を分析対象としなくても、主要部先行型と主要部後行型を確認することができます。
下の例をもとに樹形図を書いてみましょう。
(a)go to school [英語:学校に行く]
(b)remember the old days [英語:古い日々を思い出す]
(c)買い物に行く
(d)職を失う
(e)Vimos a Juan [スペイン語:フアンを見た]
(a)go to school

(b)remember the old days

(c)買い物に行く

(d)職を失う

(e)Vimos a Juan

より詳細な分析のために
ここまで見てきたのは、とても抽象的な分析でした。
実際に統語論の研究で行われる分析では、主要部や補部の中身をしっかり分類し、これら以外の要素も取り扱う必要があります。
例えば、これまでは文 → 主部 述部という形式で分析していましたが、これからはより具体的に分析を進めていくために次のように扱います。
文 → 名詞句 動詞句

これまで見てきた主部は、名詞を中心とした単語の集まり(句)でした。述部もよく見てみると動詞を中心として色々なものがくっついている句であることがわかります。
統語論の標準的な分析では、このように、名詞を主要部とした句(名詞句)と動詞を主要部とした句(動詞句)がくっついて文になると考えています。
樹形図を書いていくために、色々な用語を簡略化して整理していきましょう。
名詞句、動詞句にみられる「句」という表現は、その英訳である Phrase という語を用いて表します。
つまり、名詞は英語で Noun、動詞は英語で Verb となるので、これらに Phrase をつければ「名詞句:Noun Phrase」「動詞句:Verb Phrase」のように表されます。
これらはその頭文字をとって、名詞句(Noun Phrase)なら NP 、動詞句(Verb Phrase)なら VP と表現します。
そして、NPとVPがくっついてできる「文」は英訳の Sentence の頭文字である S を使って表します。
これらを踏まえると、文の一般構造は次のように示せます。
S → NP VP
文が色々な句からできているという考えは「句構造規則」と呼ばれており、統語論において最も基礎的な分析方法です。



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